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ルワンダにおけるマイクロファイナンスの進化:伝統的制度「イビミナ」と現代的サービス

ルワンダには、いまでも続く「イビミナ(Ibimina)」という伝統的な金融制度があります。このイビミナを中心に、ルワンダのマイクロファイナンス事情について解説しました。

イビミナ(Ibimina):ルワンダの伝統的な金融制度

イビミナは、ルワンダで古くから続く、相互扶助を目的とした伝統的な貯蓄・融資制度です。

農村部では草むらで円になって会議をしている様子がいまでもよく見られます

複数の人々がグループを作り、定期的に一定額のお金を出し合い、それを順番にメンバーに貸し出す仕組みです。イビミナは、銀行などの金融機関が利用しにくい農村地域を中心に普及しており、住民の生活を支える重要な役割を果たしています。

イビミナの主な特徴

イビミナの主な特徴は、以下の通りです。

  • 共同貯蓄: メンバーは定期的に一定額を貯蓄し、グループ全体の資金を形成します。
  • 相互融資: 集められた資金は、必要に応じてメンバーに貸し出されます。
  • 社会的結束: 単なる金融制度としてだけでなく、メンバー間の交流や連帯感を深める役割も果たします。

イビミナのメリット

イビミナは、農村住民にとって、以下のようなメリットをもたらしています。

  • 資金調達の手段: 銀行融資が難しい場合でも、イビミナを通じて必要な資金を調達できます。
  • 貯蓄の習慣: 定期的な貯蓄を通じて、計画的な資金管理の習慣を身につけることができます。
  • 相互扶助: メンバー同士が助け合うことで、経済的な困難を乗り越えることができます。

参考:The New Times – How ibimina are changing the way rural residents live

現代マイクロファイナンス制度の導入と普及

近年、ルワンダでは伝統的なイビミナに加え、近代的なマイクロファイナンス機関(MFI)が登場し、そのサービスを広げています。これらのMFIは、より多様な金融商品やサービスを提供することで、金融包摂のさらなる進展に貢献しています。

ルワンダにおけるフォーマルな金融包摂は着実に進んでおり、銀行口座の保有率は近年大きく向上しています。The New Timesの記事によれば、2020年から2024年の間に、フォーマルな金融包摂は39%成長しました (金融包摂の進展)。これは、MFIの積極的な活動や、政府による金融包摂推進策の成果と言えるでしょう。

現代的なマイクロファイナンスとイビミナの違い

現代的なマイクロファイナンス制度は、イビミナと比較して以下のような特徴があります。

  • 多様な金融商品: 小口融資だけでなく、貯蓄口座、保険、送金サービスなど、幅広い金融商品を提供しています。
  • 専門的な運営: 金融の専門知識を持つ機関が運営しており、リスク管理や効率的なサービス提供に力を入れています。
  • 規制と監督: 政府や金融当局の監督下にあり、一定の透明性や安全性が確保されています。

しかし、イビミナと現代マイクロファイナンス制度は、必ずしも対立するものではなく、相互に補完し合う関係にあります。イビミナは、地域に根ざした柔軟なサービスを提供し、MFIは、より専門的で多様な金融ニーズに対応します。農村部では依然としてイビミナが重要な役割を果たしていますが、都市部を中心にMFIの利用が拡大しています。

マイクロファイナンスの課題と展望

ルワンダにおけるマイクロファイナンスは、金融包摂を大きく前進させてきましたが、依然としていくつかの課題を抱えています。

ルワンダにおけるマイクロファイナンスのこれまでの課題

  • 高金利: 一部のマイクロファイナンス機関では、運営コストやリスクを考慮して、比較的高い金利を設定している場合があります。これは、借り手にとって返済の負担となり、さらなる貧困に陥るリスクも指摘されてきました。
  • 返済困難: 借り手の収入が不安定であったり、予期せぬ支出が発生したりした場合、返済が困難になることがあります。特に、自然災害や経済的なショックは、返済能力に大きな影響を与えます。
  • 地理的な制約: 農村部など、インフラが整っていない地域では、マイクロファイナンスサービスの提供が難しく、都市部との間でサービス利用の格差が生じていました。
  • 金融リテラシーの低さ: 金融サービスの仕組みやリスクを十分に理解していない借り手は、不適切な借入れをしてしまう可能性があります。

課題解決に向けた取り組みと進捗

ルワンダ政府や関連機関は、これらの課題に対処するために様々な取り組みを行っています。

  • 規制の強化: イビミナを含むマイクロファイナンス活動に対する規制を強化し、透明性の向上や利用者の保護を図っています (イビミナに関する規制)。これにより、不当な高金利や悪質な業者を排除する効果が期待されます。
  • 技術の活用: モバイルマネーなどのデジタル金融サービスの普及を促進することで、地理的な制約を克服し、より多くの人々が金融サービスを利用できるようになっています。
  • 金融教育の推進: 金融リテラシーを高めるための教育プログラムを実施し、借り手が適切な判断を下せるように支援しています。
  • 持続可能なマイクロファイナンスの推進: 単に融資を行うだけでなく、貯蓄や保険などの多様なサービスを提供し、借り手の長期的な経済的安定を支援する動きが広がっています。

未解決の課題と問題点

上記のような取り組みにもかかわらず、依然として未解決の課題も存在します。

  • 依然として高い金利: 規制強化が進んでいるものの、一部の機関では依然として金利が高い水準にあり、借り手の負担となっています。
  • 地方におけるアクセス格差: デジタル金融サービスが普及しつつありますが、依然としてインフラの制約などにより、地方部での金融サービスへのアクセスは都市部に比べて限定的です。
  • 債務超過のリスク: 金融サービスの利用者が増加する一方で、複数の機関から借入れを行い、債務超過に陥るリスクも懸念されています。

これらの未解決の課題は、金融包摂の恩恵が全ての人々に平等に行き渡ることを妨げる要因となります。特に、脆弱な立場にある人々にとっては、高金利や債務超過は深刻な問題となり、貧困からの脱却をより困難にする可能性があります。

ルワンダにおけるマイクロファイナンスの具体例

Urwego Finance CBC

  • 概要: キリスト教系の国際的なマイクロファイナンスネットワークであるHope Internationalの傘下の銀行です。ルワンダ国内で幅広いマイクロファイナンスサービスを提供しており、特に農村部や女性起業家への融資に力を入れています。
  • 注目ポイント: 預金、融資、保険、送金など、多様な金融商品を提供しており、単なる融資だけでなく、顧客の長期的な経済的安定を支援する包括的なアプローチが特徴です。また、技術を活用した新しいサービスの開発にも積極的です。
  • 差別化ポイント: 国際的なネットワークのノウハウや資金力を背景に、地域に根ざした持続可能なマイクロファイナンスの実践を目指しています。

参考:Urwego Finance CBC

2. Banque Populaire du Rwanda (BPR)

  • 概要: 1975年の設立以来、「地域密着型銀行」として知られるBPRは、マイクロファイナンスにも積極的に取り組んでいます。幅広い支店ネットワークを持ち、多くの人々に金融サービスを提供しています。
  • 注目ポイント: 全国的な支店網を活かし、都市部だけでなく地方部にもアクセスしやすい点が強みです。モバイルバンキングなどのデジタルチャネルを通じたマイクロファイナンスサービスの提供も拡大しています。
  • 差別化ポイント: 既存の銀行インフラとデジタル技術を組み合わせることで、より多くの顧客に効率的にマイクロファイナンスサービスを提供しています。

参考:BPR

結論:持続可能な金融包摂に向けて

ルワンダにおけるマイクロファイナンスは、伝統的なイビミナと近代的なマイクロファイナンス機関が共存し、それぞれの強みを活かしながら発展してきました。イビミナは地域社会の結束を強め、柔軟な資金調達の機会を提供し、一方、MFIは多様な金融商品と専門的なサービスを通じて、より広範な金融ニーズに応えています。

近年、政府や関係機関の努力により、金融包摂は着実に進展し、多くの人々がフォーマルな金融システムへのアクセスを得るようになりました。しかし、依然として高金利、地域間のサービス格差、債務超過のリスクといった課題も存在します。これらの課題を克服し、真に持続可能な金融包摂を実現するためには、以下のような取り組みが重要となります。

  • 透明性の向上と公正な金利設定: マイクロファイナンス機関の運営の透明性を高め、借り手にとって負担の少ない公正な金利設定を促す必要があります。
  • 地方インフラの整備とデジタル金融の活用: 情報通信技術を活用し、地方部においても質の高い金融サービスが利用できるよう、インフラ整備とデジタル金融の普及を推進する必要があります。
  • 金融リテラシー教育の強化: 全ての人が金融サービスの仕組みやリスクを理解し、適切な利用ができるよう、継続的な金融教育を行う必要があります。
  • 責任ある融資の推進: マイクロファイナンス機関は、借り手の返済能力を慎重に評価し、過剰な融資を防ぐための取り組みを強化する必要があります。

ルワンダが持続的な経済成長を遂げ、貧困削減をさらに進めていくためには、伝統と革新を融合させながら、全ての人々が恩恵を受けられる包摂的な金融システムの構築が不可欠です。

マイクロファイナンスは、そのための重要な鍵となるでしょう。今後のルワンダにおけるマイクロファイナンスの発展と、それがもたらすより公平で豊かな社会の実現に期待が高まります。

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