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5年で100万人のプログラマー育成!ルワンダ国家変革戦略NST2を解説

アフリカのルワンダでスタディツアーや情報発信をしています、タケダノリヒロ(@NoReHero)です。

2024年8月23日、ルワンダの5ヵ年計画であるNST2(第2次国家変革戦略/2nd National Strategy for Transformation)が承認されたと、XのGovernment of Rwanda アカウントにて発表されました。前身のNST1を引き継ぐものです。雇用創出、輸出促進、教育の質、発育阻害と栄養失調の削減、公共サービスの提供強化という5つの優先事項にもとづいています。

Google画像翻訳による日本語訳(一部不自然な訳があります)

優先事項としてあげられているのは上記5項目ですが、「ゴール(目標)」は13項目設定されています。以下、NST1の達成状況を振り返りながらひとつずつ見ていきましょう。

ゴール1-4

Google画像翻訳による日本語訳(一部不自然な訳があります)

ゴール1:農業の近代化

  • 農業部門で年間6%以上の成長を達成。より市場志向で持続可能なものとする。
  • 生産性を50%以上増加:灌漑地の85%拡大、肥料や種子へのアクセスの向上、家畜の品種改良、家畜飼料の国内生産の増加により達成する。

【NST1のレビュー(農業)】
・耕作可能な土地は98万haの目標に対して77万300ha以上が整備された
・灌漑可能な土地は48,508haから71,585haに達した
・土壌浸食対策は計画の142,500haに対して142,000haで実施
・政府の補助金プログラム(Nkuganire)を通じて、種子の利用と農家の訓練の民営化の結果、必要な種子の増殖は3,416トンから6,131トンに増加
・肥料の使用は32kg/haから70kg/ha(目標75kg/ha)に増加
・政府供給の肥料は45,000トンから96,000トンに増加
・首相は、農業におけるテクノロジーの活用は容易なことではないが、政府は農家により多くの耕作機械を提供することに重点を置くと述べた。
・牛乳集荷センター56か所から134か所に増加
・生産量は牛乳7億7600万リットルから10億リットルに増加
・動物および家畜保険(政府が40%の補助金を提供する)も増加
・首相「今後数年間で、動物保険と農作物保険への参加がさらに増えることを望んでいます」
出典:2024年6月5日 KT PRESS

農業に関するNST1の達成状況とNST2の目標を見比べると、灌漑地の拡大、肥料や種子へのアクセス向上などが引き継がれていることがわかります。

ルワンダで畑や農作業の様子を見ていて気づくのは、ほとんど耕作機械を使っていないということ。土地が狭いうえに丘陵地であることや、内陸であるため輸入コストがかかることがネックになっていると思われますが、政府としてはもっと機械化していきたいと考えているようです。

ゴール2:すべての人に仕事を

  • 125万の生産的で適切な雇用が創出され、年間25万の新規雇用が創出される

【NST1のレビュー(雇用)】
・産業部門も雇用創出において重要な役割を果たした(目標150万件のうち年間137万4,214件)が、この目標は新型コロナにより完全には達成されなかった
出典:2024年6月5日 KT PRESS

ゴール3:ビジネスにオープンな環境

  • 民間投資の増加:2023年の22億ドルから2029年までに46億ドルへ倍増させる
  • 輸出額の増加:付加価値に重点を置いた非伝統的製品、農産物加工、鉱業の拡大により、35億ドルから73億ドルへ

【NST1のレビュー(ビジネス)】
・3つの製薬工場が建設 (その他、建設資材、蚊帳工場、肥料工場など)
・新しい特別区や工業地帯を建設する計画があるため、より多くの投資を誘致する計画も
・GDP増加における製造業の役割は21.7%と目標とされていたが22%に達し、現地工場の生産は年間10%に達し、引き続き増加している
・4つの鉱物処理工場(金、錫石、コルタン、貴石)を建設し、鉱物輸出収入は2024年時点で3億7,400万ドルから11億ドルに飛躍的に増加すると見込まれている
出典:2024年6月5日 KT PRESS

ゴール4:メイドインルワンダ

  • 農業、製造業、サービス業への多額の投資によって経済を活性化し、雇用を創出する高品質の地元産品の拠点となる

ゴール5-8

Google画像翻訳による日本語訳(一部不自然な訳があります)

ゴール5:教育のための強固な基盤の構築

  • 就学前教育の就学率を35%から65%にし、生涯学習の基礎として幼児教育を推進するという国の取り組みを再確認する

【NST1のレビュー(教育)】
・学校の過密状態を緩和するだけでなく、教師の能力と福利厚生を向上させるために、より多くの教室を建設することで教育の質を向上させることを緊急に計画
・27,000の教室が建設
・教師のキャリアパスと給与は向上
・教師のSACCO(Savings and Credit Cooperative Organizations)はより多くの資金を受け取っており、毎年10億ルワンダフランから50億ルワンダフランの増額を注入
・学校給食プログラムによりすべての子供が食事をとれるようになった
・教師の数が71,041人から110,523人に増加
・多くの生徒が成績が向上して学校に戻っている
出典:2024年6月5日 KT PRESS

ゴール6:将来に向けたスキル開発

  • 100万人のプログラマーが育成され、50万人が高度なICTスキルを習得する
  • 市場で需要の高いスキルを提供するために、TVETの卓越したセンターが設立される

【NST1のレビュー(スキル開発)】
・技術学校があるのはわずか200地区だったが、国内416地区のうち現在395地区にある
出典:2024年6月5日 KT PRESS

 ゴール7:質の高い保健医療をすべての人に

  • 登録医療従事者の数を4倍に増やし、母子および乳児の保健サービスを改善することで、質の高い医療へのアクセスが拡大する

【NST1のレビュー(保健医療)】
・2017年以降、7つの病院(ガトゥンダ、ガトンデ、ムニニ、ニャビケンケ、ビュンバ、ニャルゲンゲ、IRCAD)が建設
・12の新しい保健センターが建設、保健所が473から1,252に増加、国民は近い距離で医療を受けられるように
・健康保険(mutuelle de sante)加入率は2017年の83%から90.6%に
・平均寿命は66~69.6歳に延びた
出典:2024年6月5日 KT PRESS

ゴール8:栄養失調との戦いの強化

  • 栄養失調対策を強化し、発育阻害率33%から15%への半減を目指す

ゴール9-13

Google画像翻訳による日本語訳(一部不自然な訳があります)

ゴール9:清潔な水と電気への普遍的なアクセス

  • 2029年までに、ルワンダのすべての家庭、学校、医療施設が、清潔な水、衛生設備、衛生サービス、安定した電力を利用できるようになる

【NST1のレビュー(水と電気)】
・2024年までに清潔な水と電力への100%アクセスを達成する計画だった。首相は、7つの水処理施設が建設され、2017年の182.120 m3から現在までに329.652 m3に水が増加したことを示した
・電力へのアクセス34.4%(931,552世帯)から76.3%(2,629,673世帯)に増加
出典:2024年6月5日 KT PRESS

ゴール10:VISITRWANDAの促進

  • 観光収入はほぼ倍増し、MICE(会議、インセンティブ旅行、カンファレンス、展示会)や主要なスポーツイベントの開催地としてトップクラスの国となる

【NST1のレビュー(観光)】
・最大の外貨獲得源である観光部門も3億7000万ドルから6億2000万ドルに成長し、そのうち9500万ドルは会議やカンファレンス(MICE)の開催によるもの
出典:2024年6月5日 KT PRESS

ゴール11:誰も取り残されない、単一デジタルID

  • 単一デジタルIDシステムが導入され、政府サービスへのアクセスが革命的に変わり、ルワンダ国民の公共機関とのやり取りがより簡単かつ迅速に

【NST1のレビュー(ICT)】
・国内の97%がインターネット接続でカバーされており、利用者は68.9%であり、15歳から35歳のルワンダ人(85%)がインターネットベースの技術の使い方を知っている
・18歳以上の人の93%が金融サービスを受けられるようになった
出典:2024年6月5日 KT PRESS

ゴール12:電子政府への普遍的なアクセス

  • 2029年までにすべての政府サービスが完全にデジタル化され、サービスの提供と説明責任が強化される。

【NST1のレビュー(電子政府)】
・電子サービスも2017年の155から684に増加しており、政府は電子サービスをさらに活用する計画
出典:2024年6月5日 KT PRESS

ゴール13:パートナーシップの推進

  • 経済外交と国際協力を強化し、貿易と投資の機会を確保し、ルワンダの世界的な知名度を高めて共通の繁栄を推進する
  • ルワンダコミュニティアボード(Rwandan Community Aboard)が国家開発目標に積極的に貢献し、支援する
  • 平和と安全が維持され、ルワンダの継続的な成長と地域社会の積極的な関与のための安定した環境が確保される

その他:インフラ

NST2ではなぜかインフラについて明言されていませんが、NST1では以下のような達成状況です。

【NST1のレビュー(インフラ)】
・キガリ市のほぼすべての地区と市が土地利用マスタープランを更新(14地区が完了、8地区が進行中、6地区が近日完了予定)
・住民は建設された87の新しい居住地(17,000世帯の高リスクおよび脆弱な世帯が居住)の計画された居住地に居住している
・上院議員や国会議員はルワンダの道路の質と基準に疑問を呈したが、首相は、少なくとも主要道路(地区内)の大半は舗装されており、キガリや他の主要都市では道路網が1,700km増加し、230kmの新しい道路が建設され、さらに多くの場所を結ぶ支線道路が4,137km建設されたと述べた。
・道路上の街灯は663キロメートルから2.185キロメートルに増加
・首相は近い将来さらに多くの道路がアップグレードされると述べた
出典:2024年6月5日 KT PRESS

ポイント解説

依然として重要な農業

ゴール1では「農業の近代化」が目指されています。元来ルワンダは農業主体の国で、労働人口の多くが農業従事者でした。おもな輸出品はコーヒーや茶でしたが、内陸国で輸出にはコストがかかってしまうことや、面積が四国の1.5倍ほどしかない小国であることから、農業の生産性は高くありません。

そこで「知識基盤型経済」を目指してITや観光を推進し、一次産業から三次産業への移行を目指してきました。そしてついに2024年7月に労働人口の割合においてサービス業が44%となり、39.3%となった農業を上回ったのです。これはルワンダの労働構造において大きな転換点であると言えます。

しかしながら、農業が依然重要であることに変わりはありません。だからこそNST2においても、より市場志向で持続可能なものとすることや、生産性の向上が目指されているのです。

就学前教育はなぜ必要か

教育関連の指標としては「就学前教育の就学率を35%から65%に」という目標が掲げられています。「就学前」というのがポイントで、小学校や中学校ではなく、その前の幼稚園や保育園にあたる年代の教育が重視されています。

実はルワンダの小学校の就学率は数年前から100%に近い水準となっているのですが、中退(ドロップアウト)してしまう生徒がいることが課題となっています。その数値も2020年の9.4%から2022年には6.4%にまで減少してきています。


中退を防ぐひとつの手段としては「学校給食の普及」が有効だという認識が近年強まり、学校給食の恩恵を受ける生徒は2020年23%から23年92.8%に、提供する学校も60.1%から87.4%に急増しています。

安定して食事を与えられない家庭も多いので、「学校に行けば安くご飯を食べられる」という状況をつくることで生徒にとっても保護者にとっても通学するメリットになるのです。

中退を防ぐ別の手段として考えられるのが、NST2で重視されている就学前教育。JICAが公開している「ルワンダ国 ECD・教育分野における情報収集・確認調査(QCBS)報告書」では、就学前教育を受けることで、児童は適切な年齢と学力で初等教育をスタートできることになり、留年・退学のリスクは削減されると指摘されています。

小学校に上がってすぐの段階で、勉強についていける子とついていけない子の差があるわけですが、ルワンダではまだまだ1クラスあたりの生徒数が多く、先生もすべての子どもに指導が行き届かないことがあります。そうなると、勉強が苦手な子が落第してしまったり、自信をなくしてしまったりして、ドロップアウトする可能性が高まってしまうのです。

そういった事態を防ぐために、就学前教育の段階から基礎的な学力を高めていくことが目指されていると思われます。

ルワンダはIT立国になれるか

わたしは2016年にルワンダに来ましたが、当時から「IT立国」というキャッチコピーが使われていました。ただし8年経ったいまでも、残念ながらそこまでITの力を現地で感じる機会は多くありません。

そんななかで「100万人のプログラマー育成」「50万人が高度なICTスキルを習得する」といった目標をNST2で掲げているのはルワンダらしさを感じられますし、名実ともに「IT立国」となる意気込みの現れのように感じます。

「市場で需要の高いスキルを提供するために、TVETの卓越したセンターが設立される」という目標もありますが、TVET(ティヴェット)とはTechnical, Vocational Education and Trainingつまり技術・職業教育・訓練校のこと。

下記の記事では農業、ICT、観光分野についておもに取り上げられていますが、ICT分野の人材育成においてTVETが重要な役割を果たしていくことになりそうです。


「よい大学に行けばよい会社に入れる」という神話が崩れたのはルワンダも日本もおなじ。単なる学歴より重要なのは手に職をつけること。2018/19年(卒業生21,534人)および2020/21年(卒業生24,748人)にて、レベル1〜5のTVET卒業生の70%以上が卒業後6か月以内に就職を確保したそうで、雇用創出においてTVETへの期待が高まっています。

まとめ

ゴール1:農業の近代化
・農業部門で年間6%以上の成長を達成。より市場志向で持続可能なものとする。
・生産性を50%以上増加:灌漑地の85%拡大、肥料や種子へのアクセスの向上、家畜の品種改良、家畜飼料の国内生産の増加により達成する。
ゴール2:すべての人に仕事を
・125万の生産的で適切な雇用が創出され、年間25万の新規雇用が創出される
ゴール3:ビジネスにオープンな環境
・民間投資の増加:2023年の22億ドルから2029年までに46億ドルへ倍増させる
・輸出額の増加:付加価値に重点を置いた非伝統的製品、農産物加工、鉱業の拡大により、35億ドルから73億ドルへ
ゴール4:メイドインルワンダ
・農業、製造業、サービス業への多額の投資によって経済を活性化し、雇用を創出する高品質の地元産品の拠点となる
ゴール5:教育のための強固な基盤の構築
・就学前教育の就学率を35%から65%にし、生涯学習の基礎として幼児教育を推進するという国の取り組みを再確認する
ゴール6:将来に向けたスキル開発
・100万人のプログラマーが育成され、50万人が高度なICTスキルを習得する
・市場で需要の高いスキルを提供するために、TVETの卓越したセンターが設立される
ゴール7:質の高い保健医療をすべての人に
・登録医療従事者の数を4倍に増やし、母子および乳児の保健サービスを改善することで、質の高い医療へのアクセスが拡大する
ゴール8:栄養失調との戦いの強化
・栄養失調対策を強化し、発育阻害率33%から15%への半減を目指す
ゴール9:清潔な水と電気への普遍的なアクセス
・2029年までに、ルワンダのすべての家庭、学校、医療施設が、清潔な水、衛生設備、衛生サービス、安定した電力を利用できるようになる
ゴール10:VISITRWANDAの促進
・観光収入はほぼ倍増し、MICE(会議、インセンティブ旅行、カンファレンス、展示会)や主要なスポーツイベントの開催地としてトップクラスの国となる
ゴール11:誰も取り残されない、単一デジタルID
・単一デジタルIDシステムが導入され、政府サービスへのアクセスが革命的に変わり、ルワンダ国民の公共機関とのやり取りがより簡単かつ迅速に
ゴール12:電子政府への普遍的なアクセス
・2029年までにすべての政府サービスが完全にデジタル化され、サービスの提供と説明責任が強化される。
ゴール13:パートナーシップの推進
・経済外交と国際協力を強化し、貿易と投資の機会を確保し、ルワンダの世界的な知名度を高めて共通の繁栄を推進する
・ルワンダコミュニティアボード(Rwandan Community Aboard)が国家開発目標に積極的に貢献し、支援する
・平和と安全が維持され、ルワンダの継続的な成長と地域社会の積極的な関与のための安定した環境が確保される

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