ルワンダで改良カマドつくってみた〜カマドヨーコの作り方と失敗ポイント〜
アフリカのルワンダでスタディツアーや情報発信を仕事にしています、タケダノリヒロ(@NoReHero)です。
電気通信大学の石垣陽特任准教授から依頼を受け、家庭での大気汚染に関するフィールド調査をおこなっています。今回はレポート第2弾。改良カマド「カマドヨーコ」の作り方や、結果的に失敗してしまったのですがそれを踏まえたうえでの反省点などを掲載しています。
これから自分でもつくってみたいというJICA海外協力隊の方や国際協力関係の方はぜひ参考にしてみてください。
Contents
カマドヨウコとは
今回作成したカマドは、以前マダガスカルで中西葉子さんという青年海外協力隊の方が普及させた「カマドヨーコ」と呼ばれるもの。
カマドヨーコとは、
- 簡単に手に入る安価な材料で製作可能
- 燃焼効率が良く、薪や炭が少なくて済む
- 煙が少なくなる
- 調理の時間が短縮される
という非常にすぐれたかまどなのです!
作り方は以下の通り。
この説明をもとに、ルワンダでも再現してみました。
カマドヨウコの材料
まずは材料集めから。
必要なものは、
- 粘土 : バケツ1杯
- 赤土 :バケツ1杯 強
- 灰 :バケツ半分
- わら : 両手でつかめる分くらい(5cm の長さに切ったもの)
- 水 : バケツ1/3~半分
- 鉄の棒 :2~3本(なくてもOK)
- 竹:2本(20~30cm程度、ペットボトルや木の棒など軽い筒状のもので代用可)
です。
粘土
粘土はたまたま近所に陶器屋さんがあったので、そこで購入することができました。
たらい代含めて1,000円程度(10,000RWF)でした。最初は「1500円(15,000RWF)」と言われたものの、ルワンダ人の友人(タクシードライバーのおじちゃん)と一緒に交渉した結果、この金額に落ち着きました。値段は交渉次第で変わりそうです。
【ちなみに、の話①】
友人は最初「500円(5,000RWF)で!」と1/3の値段に値切ろうとしており、あまりの強気の交渉に陶器屋さんが気分を害さないか心配になったので「それは値切りすぎじゃない??」と聞きました。すると「最初は高めに言われて、そこから値段交渉するのがルワンダの文化だから!まあおれも粘土の相場は知らないけど。ガッハッハ」とのこと。しかしそのままでは埒が明かなそうだったので、間をとって1000円で買い取ってきた、という余談でした。ぼくも4年ほどルワンダに住んでいるので、ふだんから値段交渉はしていますが、そういう文化ならもっと堂々と値切っても良いんだなとあらためて学びました。
粘土を購入した陶器屋さんはこちらの「Kigali Ceramic Filter Factory」。
「カチール(Kacyiru)のTV1(テレビ局)」の裏にあるので、「TV1」と言えばおそらく地元の人だったら分かると思います。JICAルワンダ事務所からは歩いて15分程度。お店の人はあまり英語が通じなさそうだったので、ルワンダ語ができる人と一緒に行くのをおすすめします。
ルワンダでは地方でも壺などを作っている工房はあると思うので、そういったところに行けば粘土は手に入るはず!
赤土
意外と苦労したのが赤土。地方に住んでいたときはそこら中に赤土がありました。首都キガリの自宅周辺にも赤土はあるのですが、石がごろごろ混ざっていて、「これはカマドづくりには向かないんじゃないか。地方に行ったほうが良いよ」とルワンダ人の友人にも言われていました。
しかし、「カマドヨーコ」のレシピでは最初に赤土をふるいにかけることになっていたので、試しにやってみたところ、見事にふわふわサラサラの赤土だけを取り出すことができました!
【ちなみに、の話②】
ふるいは持っていなかったので中心街に探しに行きました。あちこち探し回るのが嫌だったので、ローカルなお店と比べると高いけど品揃えは豊富であろう中華スーパーのT2000へ。想像していたようなふるいは見当たらなかったのですが、揚げ物用の油切りザルがあったのでこれを500円(5000RWF)で購入。取っ手が折り畳める上にしっかりした作りなので、自分ではいい買い物ができたと思って持って帰りました。
赤土集めを手伝ってくれたうちの警備員さんに、それを自慢気に見せたら「えー!これで500円はた〜かいよ!!もったいない!」と何度も何度も言われたのでさすがに凹みました。。やっぱり現地の人とは金銭感覚違うんだなあ、お金を湯水の如く無駄使いする成金ムズング(外国人)だと思われたかなあ、と。。
でも後日カマドづくりのときに、その家庭のお母さんに「これ500円なんだけど、どう思いますか?」と見せたら「良いじゃない!私が欲しいくらい」と言われたので「でしょ〜?」とニンマリしてしまった、というお話。現地の人で、同じくらいの生活レベルであっても、金銭感覚は違うものですね。
わら(藁)
土には強度を高めるため藁(ワラ)を入れるそうです。しかし、もちろん藁の存在は知っているものの、それを手に入れようと思ったら「藁ってどこで売ってるの?」「そもそも、藁って何だ?」という疑問が湧いてきました。知ってるようで知らないことって、あるものですよね。それでグーグルで検索してみたら、藁とは「稲・小麦等、イネ科植物の主に茎を乾燥させた物」だそうです。
ということで、用意したのがトウモロコシの皮。
道端に落ちているものを拾ってきました。トウモロコシはイネ科だからおそらく使えるだろうということで。これじゃダメだという情報をご存知の方は教えていただけたら幸いです。
カマドヨウコをつくってみた
いよいよカマドづくりです。今回の調査に協力してもらっている、ムカムララさんのお宅でおこないました。
【過去記事】途上国で深刻な家庭での大気汚染!ルワンダで調査してみた
① 赤土と灰をふるいにかけ、ゴミや砂を除きます(灰はムカムララさんに準備してもらいました)
② ①と粘土、わらをよく混ぜます
③水を少しづつ加えます。一気に加えないように注意!
④足を使って、ねばりが出るまでよくこねます
⑤粘土や赤土の塊がないくらいによく混ざったら、O K !
⑥少し縦に長い泥団子を作ります
乾燥後、最終的にかまどは割れてしまったのですが、おそらくこのときに水を入れすぎてしまったのが失敗の原因。「一気に加えないように注意!」と書いてあったので最初はちょっとずつ水を加えていたのですが、なかなか材料が混ざらないのがもどかしくてザバッと入れてしまったのです。
そうすると混ぜやすくはなったのですが、「④足を使って、ねばりが出るまでよくこねます」の工程も「すでによく混ざってるからやらなくていいのでは?」ということで飛ばしてしまいました。つくった泥団子は持ち上げると崩れてしまうほどビチャビチャの状態。
水を入れすぎたと気づいたときに土を足せればよかったのですが、すでに赤土は使い切っていたため配分が変わってしまうことを恐れて追加はしませんでした。きっと足を使わないとこねられないくらい硬めの水分量がベストだから、わざわざ「足を使って」と書いてあったんだろうなと、いま振り返って思います。。
⑦鍋を下に置き、その周りに泥団子をくっつけていき、15cmの高さまで泥で壁を作ります
⑧2本の竹をかまどの口と並行に並べ、 煙の排出口を作ります(最後に竹は取ります)
当初竹の代わりに家にあったビール瓶を使おうとしたのですが、重すぎて壁が崩れてしまいました。なのでビール瓶はやめて木の棒で代用。壁に穴をあけられれば良いので、竹のように軽い棒状のものであればおそらくなんでも良いはず。
⑨壁の高さが30cm程になるよう、さらに泥をのせます
⑩壁を少し削り、泥で作った足を3つ壁に取り付けます
⑪完成!日陰で1〜2週間乾燥、完全に乾いたら台所に移動させ、調理開始!
「日陰で1〜2週間乾燥、完全に乾いたら台所に移動させ、調理開始」と説明書には書いてありましたが、雨が多かったからか、完全に乾燥するまで3〜4週間かかりました。
カマドヨウコ、乾燥完了
かまどが完成したという知らせを受けて訪問してみると、排気口のあたりからパックリと2つに割れてしまっていました。
ひびが何箇所か入っており、そのまま持ち上げると損傷が激しくなりそうだったため、板の上に載せて気をつけながら外へ。一応かまどとして使うことはできました。
従来の薪ストーブとの空気汚染度やお湯が沸くまでの時間の比較については追ってご報告します。ひび割れに関しては修復するか、イチからかまどを作り直す予定。
薪が少なくなりそう!
今回のカマドヨーコづくりは上手くいかなかったのですが、ムカムララさんに使ってもらった感触は悪くなさそうでした。特に良かった点は「薪が少なくて済むこと」。従来の薪ストーブと比べて、鍋を置く場所が低いので、その分火と鍋底の距離が近くなり、比較的少ない薪で熱することができそうです。
残念ながら割れてしまったカマドヨーコ第1号ですが、ムカムララさんは「このままでも使いたいし、修復できないか試してみる」と言ってくれています。なんとかちゃんとした形で使ってもらえるように、引き続き挑戦してみます。
カマドづくりのポイント
元マダガスカルの青年海外協力隊員で私の同期でもある友人が、カマドヨーコを何度も作ったことがある!ということで、いくつかアドバイスをもらったのであわせて掲載しておきます。
カマドヨーコが割れてしまう時は
・乾燥中、2-3日に1回、型となる鍋をはめて表面を少し水で濡らしながら綺麗に整形する
・乾燥時は日向ではなく日陰の風通しの良い場所でじっくり乾燥させる
と綺麗な形になりやすい。もちろん、その土地の素材にあった材料配分することが前提。
材料を混ぜる時に足も使って丁寧に混ぜ込むと馴染みがよくなる(混ぜ込むのはいつも一番若手の力ありそうな男の人に、スコップで藁を細かくしてもらいながら力技で脚を使ってやってもらってた)
彼女が経験者であることをもっと早く知っていれば……!と思ったのですが、このアドバイスのおかげで次につくるときは上手くできそうな気がします!
これからカマドヨーコを作ってみたい方は、このレポートの特に失敗した部分を参考にしてもらえたらうれしいです。続報をお楽しみに!
Special Thanks
今回の一連の調査では、現地在住でぼくの協力隊時代の先輩でもある大江里佳さんに通訳をしてもらっています。
彼女がいるおかげでムカムララさん一家とも意思疎通をはかりながら調査を進めることができています。協力隊の縦と横のつながりは、派遣終了から3年以上経った今でも大きな力になっています。そして、泥をこねてカマドを作るという「協力隊っぽい」取組みを前々からの仲間である彼女と一緒にできていることを、なんだかうれしいなと思ったり。いつもありがとう!
【前回の記事】途上国で深刻な家庭での大気汚染!ルワンダで調査してみた