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途上国で深刻な家庭での大気汚染!ルワンダで調査してみた

アフリカのルワンダでスタディツアーや情報発信を仕事にしています、タケダノリヒロ(@NoReHero)です。

電気通信大学の石垣陽特任准教授から依頼を受け、家庭での大気汚染に関するフィールド調査をおこなっています。今回はレポート第一弾、事前調査(ベースライン調査)編です!センサーを使って空気の汚染度を測ったのですが、その深刻さを肌で感じる調査となりました。。

意外と多い家庭での大気汚染

調査家庭で使われている薪

大気汚染による死者数は毎年700万人。「大気汚染」と言うと大規模な工場などから出る煙や車の排気ガスなどをイメージするかもしれませんが、実は空気の汚染は家庭内で起こっているものも多く、死因の半数以上が屋内の空気汚染によるものだと言われているんです。ルワンダを含む発展途上国では、料理用の燃料として薪や石炭などを屋内で使用することが多く、これが主に汚染の原因となっています。

参考:WHO:環境汚染死因1位は料理用燃料 | ナショナルジオグラフィック日本版サイト

使用機器

このような課題に対して、かまどを改良して、その周辺の空気の質をセンサーで測り、改善されているかどうかを調べるのが本フィールド調査の目的です。センサーには2種類あり、アンドロイドのスマートフォンに接続して専用アプリで計測するものと、昔懐かしい「タマゴっち」のように空気汚染度に応じてキャラクターの様子が変化する機能のある「タマゴっち型測定器」を使用します。

調査に使用する測定器

今回はかまど改良前の事前調査(ベースライン調査)ということで、ふだんの調理に関する聞き取り調査や、現在の環境での空気汚染度調査をおこないました。

聞き取り調査

調査に協力してくださっているのは、首都キガリのニャルゲンゲ郡、キガリセクター、キガリセル、ルハンゴ村にお住まいのムカムララさん一家。

首都キガリの西部、キガリ山のふもとに位置するムカムララ家

こちらで通訳の大江里佳さんを交えてルワンダ語で聞き取りをおこないました。

聞き取りに応じるムカムララさん

調理環境

質問 回答
使用している燃料 薪を主に使用。炭も使用。
キッチンを使用している人の年代 60代(同居家族は10代ひとり, 20代ひとり, 30代ふたり)
一日のうちキッチンを利用している合計時間 4時間(2時間×2回)
料理を行っている時間帯 11時前後、17時前後
調理時の換気の有無 あり(外で調理)
子供がキッチンに入る機会 なし

↑表は横スクロールできます

燃料に関しては、薪を主に使い、場合によっては炭も使っているそうです。

手前で炭、奥で薪を使用

実際この日はふたつのインバブラ(七輪のようなもの)を使って、片方では薪で豆を煮て、片方では炭でイギコーマ(モロコシ、大豆、トウモロコシなどの粉を水に溶かして茹で、砂糖を加えたおかゆのようなもの)をつくっていました。

イギコーマ、マグカップにたっぷり2杯もいただきました。ほんのり甘くて栄養たっぷり。

薪と炭の違い(価格、煙の量)

薪と炭は以下のように使い分けられています。

値段 安い(約1,000円で2ヶ月ほど持つ)
→時間のかかる豆やイソンべ(キャッサバの葉を煮込んだ料理)を煮るときに使う
高い(約1,200円で1ヶ月持たない)
→そこまで時間がかからない米や芋などの調理に使う
時間 火がつくまでは早い 火がつくまで少し時間がかかる 
身体への負担 多い(煙が多い、火の調節が必要で体を動かす)
→同居の20〜30代の子どもたちが使う
少ない
→高齢のムカムララさんが使う

ちなみに、買ってきた薪ではなく無料で拾ってきた枝や落ち葉などを使う家庭もあるそうですが、それらはきちんと乾燥されておらず水分を多く含むため煙が大量に出るそうです。

身体への影響と自覚症状

自覚症状については、用意していたほとんどの項目が当てはまりました。

質問 回答
目が痛い あり
目がしみる あり(赤くなることもある)
目がかゆい あり
涙が出る あり(特に薪を使うとき)
喉の痛み あり(特に火を大きくするため息を吹きかけるとき)
咳き込む なし
頭が痛い あり(特に薪を使うとき)
くしゃみ あり
鼻水 あり
鼻がかゆい なし

また、炭よりも薪のほうが煙が多く出るため、症状もひどくなりやすいということも聞き取りをしてわかった新たな発見でした。実際に調理中の薪に近づくと目にしみて涙が出てきましたが、炭のほうはあまり煙が出ておらず特に身体の異常は感じませんでした。

以下、ムカムララさんからの示唆に富むコメント。

  • 薪や炭を使った調理が身体に良くないことは知りつつ使っていた
  • いま質問をされたことで、薪や炭を使った調理が原因だと初めて知った症状もあった
  • 同じような症状をもっている人たちはまわりにも多いものの、調理が原因だということに気づいていない人もいるかもしれない
  • 特に私より年代が上の人(70代、80代)のほうが症状も強いが、原因を知らない人が多そう

このお話を聞いて、薪や炭を使った調理による健康への悪影響や具体的な対策をもっと啓発していかなければいけないと実感しています。そう強く思ったのは、センサーで大気汚染濃度を測って数字でその深刻さを目の当たりにしたからです。その結果を以下でお伝えします。

大気汚染濃度チェック

いよいよセンサーを使って、大気汚染濃度のチェックです。もともと汚染濃度が高いキガリですが、薪や炭を燃やしている近くではどのくらいになるのでしょうか。下記ツイートの動画をご覧ください。

タマゴっち型計測器で測定したところ、

  • 高ければAQIは2000を超える……!!(上記の動画で録画できたのは150〜800程度)
  • 同じ場所でも数値は大きく上下する(風向きで煙の流れが変わるせい?)

ということがわかりました。

【AQIとは?】
AQIとは「Air Quality Index(空気質指数)」と呼ばれる指数。100以上で「過敏グループにとって健康に悪い」、150を超えると「健康に悪い」、300を超えると「危険」とされていますが、キガリの場合は基本的に100を超えています(幹線道路に近いからか、我が家では大体150くらい)。

映像には収められませんでしたが、最高で2000を超えていました。。

通常時でもAQI150前後になるほど空気の悪いキガリですが、燃えている薪の近くではその10倍以上の2000という数値が検出され驚愕です。。いかに薪を使った調理が大気汚染物質を排出してるのかを肌で実感できました。

大気汚染濃度の見取り図

場所別に計測してみた見取り図が以下の図です。

  • A地点(薪の目の前)
  • B地点(火から少し離れた場所)
  • C地点(火から遠く離れた場所)
  • D地点(屋内)
  • E地点(炭の目の前)

各2回ずつ測り、その平均値を図に示しています。いずれも地面から1mの高さで計測(実際に火を扱う人がかがんだときの顔の高さ)。

AQI

もっとも数値が高いのは、やはり薪を燃やしているA地点で177.5。炭を燃やしているE地点は160.0だったので、やはり炭よりも薪のほうが身体への影響が大きいと考えられます。意外だったのは室内の数値が高かったこと(D=166.0)。室内には汚れた空気が溜まりやすいのかもしれません。室内にいれば安全というわけでもないのですね。

同様に、PM2.5の数値について計測した結果が以下の図です。

PM2.5

こちらでも薪のA地点がもっとも高く、2番目に室内が高いという結果になりました。

下記はすべての計測値をまとめた表です。

測定結果表(見取り図で示したのは「たまごっち型AQI」と「たまごっち型PM2.5」)

ストーブの能力調査

調査項目のひとつとして、お湯が沸くまでの時間も計測しました。500mlの水が沸騰するまでにかかった時間は「3分45秒」でした(フツフツし始めるまでは約2分)。

次回、改良かまどをつくるので、新しいかまどとの能力を比較します。

次回はかまどづくり

今回はあくまで事前調査。次回がこの調査のメインである改良かまどづくり。以前マダガスカルで中西葉子さんという青年海外協力隊の方が普及させた「カマドヨーコ」というかまどをルワンダでも再現してみます。

カマドヨーコとは、

  • 簡単に手に入る安価な材料で製作可能
  • 燃焼効率が良く、薪や炭が少なくて済む
  • 煙が少なくなる
  • 調理の時間が短縮される

という非常にすぐれたかまどなのです!

これをつくってしばらくムカムララさんに使っていただき、その後に今回と同じ調査をおこなって比較をします。私自身も初めての経験なので上手く作れるのか、本当に空気汚染が軽減されるのかといった不安はありますが、みなさんの協力を仰ぎながら挑戦してみたいと思います。続報にご期待ください!

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