アリス物語5|ジェンダー平等国ルワンダのリアル〜開店と失望と〜

前回までのあらすじ
ルワンダ人女性アリスは一児の母。当社アフリカノオトのホームステイプログラムで、ホストファミリーを務めている。アリスから突然電話があり、夫に家を追い出され、息子と困窮していると助けを求められた。すぐに送金し翌日会って話を聞くと、夫の暴力や不倫が発覚。息子と二人で暮らすために店舗付きの家を借りることを決意し、物件探しに向かった。
- アリス物語1|ジェンダー平等国ルワンダのリアル〜安定収入の確保〜
- アリス物語2|ジェンダー平等国ルワンダのリアル〜仕事と家庭の両立〜
- アリス物語3|ジェンダー平等国ルワンダのリアル〜夫はほんとに良い人?〜
- アリス物語4|ジェンダー平等国ルワンダのリアル〜夫の正体〜
※プライバシー保護のため画像はAI生成したもの、人物名は仮名を使っていますが、内容は実話です。
お店づくり計画!
2日後、アリスから住居兼店舗となる物件が見つかったと連絡がありました。比較的人通りが多く商売にも向いている人気物件のため、早くおさえないと他の人に取られてしまうかもと。
それは急がねばと思い、必要とされる家賃2ヶ月分14万ルワンダ・フラン(約1.5万円)とエージェントへの仲介料3万ルワンダ・フラン(約3300円)をすぐに送りました。これでひとまずアリスと息子の住居確保!DV夫から離れて暮らせるようになりひと安心。
次にお店として運営していくためのモノを揃える必要もあるため、経営プランを考えて提示してもらうことにしました。
私からのリクエストは2点。1点目は初期費用を抑えるためスモールスタートにすること。まずは小規模な事業から始め、そこで利益が出たら徐々に品数などを増やしていけばよいと考えました。
2点目は周辺のお店をよく調査し、ほかでは売っていないものを売るお店にすること。競合がいると価格競争になって利益が出しづらいし、住居としても利用するので近隣と競合になって住みづらくなるような状況は避けるべきと考えたからです。
アリスのアイデア
そんなリクエストに対してアリスから出てきたビジネスアイデアは、「ブティック」と呼ばれる形態の個人商店。食品や生活雑貨の販売や、アマンダージ(ドーナツ)やサモサなどの軽食の提供もおこなうお店のこと。
その開業のために必要なものと金額をリスト化してもらったのですが、合計10万円ほどかかるという試算に。取り急ぎDV夫から離れて暮らすために当座の資金だけでも出してあげようと思ったのですが、さすがに高すぎます……。
しかもブティックはルワンダでもっとも見かけるお店形態のひとつ。果たして本当に市場調査して、まわりに競合がいないことを確かめたうえでこのプランを立てたのだろうか……。

費用的に厳しいので、あらためてもっと費用がかからないビジネスにしてと提案しました。そして次に出てきたアイデアが「カフェ」。
たしかに小規模なローカルカフェだったらちょっとした座席を用意してお茶を出せば、そんなに費用をかけなくても成立します。実際試算してもらった初期費用は2万5千円でした。それにブティックよりは競合も少なそう。
よし、それならOKでしょう。ということで、初期費用を立て替えることに合意。利益が出たらすこしずつ返していってもらうことにしました。
開店と失望と
1週間後、アリスから店内の様子を写した動画が送られてきました。
どれどれ、どんなカフェになったかな、と思って動画を開いて思考停止。
……え……?お店はなぜか初期案として却下したはずの「ブティック」になっているのです。
「これブティックだよね?ブティックはお金がかかるから無理って言ったのになんで?お金はどうしたの?」
「神様からの恵みよ」
そんなメッセージを見て、怒りのあまりスマホをぶん投げそうになりました。
お金ないんじゃなかったの!?神様からお金もらえるわけないじゃん!!お金あるんだったらおれが出す必要なかったじゃん!!こっちだってそんなに余裕あるわけじゃないけど、どうしようもなく困ってると思ったから出したのに……!
怒りに震える指で返信し、あらためてなにがあったのかを聞きました。
「実は夫が持っていた土地を売って、それでお金ができたの」
「あの夫がお店やること認めただけじゃなくて、資金まで出してくれたの?てっきり知られたら反対されたり邪魔されたりすると思ってたけど」
「たしかにお店のことを良く思ってるわけじゃないけど、なんとかお金はもらうことができたの。ありえないようなラッキーでしょ?だから『神様のおかげ』って言ったんだよ」
まったく釈然としませんが、とりあえずお金の出どころはわかりました。そして結局ブティックになってしまいました。これからも商品仕入れたりして維持していくの、お金かかるだろうなあ……。資金提供社である自分に何の相談もなく進められてがっかりしてしまいました。
しかしこれでとりあえずアリスと息子が安心して働きながら暮らせる「居場所」を確保したわけです。商売繁盛を祈りましょう。
第6話へ続く↓
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