アリスの物語を通して知る、ジェンダー平等国ルワンダのリアル1〜安定収入の確保〜

「ルワンダには、男から苦しめられている女性がたくさんいる」
「もう私は男性を信じられない」
これは私がいっしょに働いているアリス(仮名)という女性から聞いたことばです。
ホームステイプログラムのホストファミリーとして、当社のツアーで重要な役割を担ってくれている一児の母。
いっしょにツアーを運営するなかで、彼女が見舞われたトラブルについて相談に乗り、サポートしてきました。
ルワンダは世界一女性の国会議員の割合が高く、「ジェンダー平等国」として取り上げられることもある国ですが、その実、まだまだ伝統的な男尊女卑や家父長制の空気も残っています。
政府や警察の広報、ニュースでSGBV(Sexual and Gender-based Violence、性的およびジェンダーに基づく暴力)に関する啓発やデータを目にすることはありましたが、身近なルワンダ人女性が現在進行系で被っている被害を聞き、ほんとうに切実な問題だと実感しました。
ここでは、ルワンダのひとりの女性がどのような問題を抱え、どのように生きているのか、日本のみなさんにも知ってもらいたく、彼女の物語を共有させてもらいます。
※プライバシー保護のため画像はAI生成したもの、人物名は仮名を使っていますが、内容は実話です。
アリスとの出会い
アリスは現在ルワンダの首都キガリ在住の28歳。夫と、2歳になる息子がいます。
彼女と出会ったのは10年前。わたしが青年海外協力隊として派遣された、東部県ルワマガナ郡ムシャセクターという農村部に住む学生でした。
わたしはアリスのお母さんと仲良くなり、ルワンダに来た日本人を彼女の家に泊めてもらう「ホームステイプログラム」を始めました。そのときまだ私はボランティアの身分だったのでお金はいただいていませんでしたが、それがいまのスタディツアープログラムの原型です。
そのときアリスはまだ思春期まっさかりの高校生で、わたしには会っても挨拶しかしてくれないシャイな女の子という印象でした。
それからわたしはボランティアを終えて起業、コロナで3年ほどツアーができなかった時期を挟んで数年ぶりに再会したとき、アリスは結婚してすっかり大人になっていました。
昔は目も合わせてもらえなかったのが嘘のように、明るい笑顔で目を見て会話ができるようになり、とてもうれしかったのを覚えています。そして「いま妊娠してるの。子育ては大変だと思うけど、がんばってこの子を育てるよ」とすこし大きくなったお腹をさすりながら話してくれました。その顔は、すでにやさしいお母さんの顔になっていました。
安定収入の確保
アリスはぶじに出産を終え、子育ても落ち着いてきたので、本格的にホームステイプログラムの通訳兼アテンドとして働いてもらうようになりました。
とはいっても仕事は月に0〜2回程度。日帰りのホームビジットまたは1泊のホームステイの依頼があるときだけの稼働でした。
しかし、首都キガリの薬局で働いており、完全に安定ではないものの、ある程度収入はあるので生活は問題ないと聞いていました。
ところがあるとき、その薬局の仕事がなくなってしまったのです。そこで新しい仕事を探しているから、どこか働けるところを知らないかと相談されました。
ルワンダでは正規雇用で安定収入を得られている人はごくわずか。多くの人が日雇いや低賃金の仕事で、糊口をしのいでいます。
なので「仕事を紹介してくれ」という相談は、外国人としてルワンダに住んでいればしょっちゅう受けるもの。
さして驚きはしませんでしたが、アリスという身近な人からの頼みだったのでなんとかしてあげたいと思っていたところ、ちょうど知人のレストランでスタッフを募集していると聞きました。
渡りに船と思い、アリスとレストランのオーナーを繋いで即日面接、みごと翌日から働いてもらうことに!ひとまずこれで大丈夫、と胸をなでおろしました。
第2話へ続く↓
アリスの物語を通して知る、ジェンダー平等国ルワンダのリアル2〜仕事と家庭の両立〜