アフリカ農村部20家族86人がお腹いっぱい食べていくには?
アフリカのルワンダでスタディツアーや情報発信をしながら、国際協力機関でも働いています、タケダノリヒロ(@NoReHero)です。
ルワンダ農村部(東部県ルワマガナ郡ムシャセクター)に住むシングルマザー20世帯の生活支援プロジェクトを進行中。近日中にクラウドファンディングを公開予定です。前回の記事では家庭調査の様子をお伝えしました。今回は追加調査の結果と、そこから考えたこのプロジェクトの将来像について。
20世帯の同居者構成
このプロジェクトで支援している20世帯は、AVEGA Agahozo(アヴェガ・アガホゾ)というグループに属しています。1994年のルワンダ虐殺によって未亡人になった女性たちによって構成されています。
その20世帯の同居者構成を調べてもらうよう、グループリーダーのフェーザさんに依頼していました。その結果、AVEGAメンバーが現在18名、その子ども世代が36名、孫世代が31名、AVEGAメンバーの親が1名の計86名だということが判明。
ちなみに「家族構成」ではなく「同居者構成」と言っているのは、ルワンダでは日本よりも「家族」の定義があいまいだから。血のつながっていない子どもや、自立して親元を離れている子どももいるので、本プロジェクトでは「生計を同一にする者」を支援対象とするため「同居者」という言葉を使っています。
この「86」という具体的な数字がわかったことにより、さらにやる気が湧き上がってきました。毎日の食事も満足に取れず、学費の支払いにも苦労しているこの86人の生活を変えられたらどんなに良いだろうと。栄養のあるご飯をお腹いっぱい食べられて、お金の心配をせず学校に通える/通わせられる環境をつくっていきたいです。
子ども世代の可能性
前回の記事にも書きましたが、本来であればただ寄付するだけでなくお母さんたちが自分で稼いで自立できるようになる支援(職業訓練や雇用創出)が一番良いと思っています。でも高齢で体が丈夫ではなく、読み書きができない人もいて、なおかつ特に資源や名産品があるわけでもないこの村で、収入を生み出していくのはかなりきびしいよなあと思っていました。
しかし今回の追加調査の結果を見て、子ども世代の36名であれば自立できる可能性が高いのではと考えています。というのも、前回の家庭調査でインタビューしたジュリアニさんから、彼女の娘さんはかつて専門学校に通っていたので革製品をつくるスキルがある、その道具がないから仕事ができていないが5万円ほどあれば道具を買えて仕事ができるようになると聞いていたからです。
直近で予定しているクラウドファンディングでは20世帯に均等に現金と食糧を現物給付することを考えていたため、その娘さんに革細工道具をプレゼントすることは難しいと思っていました。しかしここでも「36」という数字を見て、ほかにもジュリアニさんの娘みたいに何らかのスキルを持った人がいるかもしれない、道具の寄付などちょっとしたきっかけで自立できるようになるかもしれないと気づいたのです。
なのでクラウドファンディングの次の展開として、AVEGAメンバーの子ども世代の職業的自立支援を考えています。子ども世代になんらかのスキルや自立できる可能性がある人がいないかを調査し、その可能性を広げる後押しをできたらと。
一家の長であるAVEGAメンバーには生活支援を、子ども世代には職業的自立支援を、孫世代には教育支援を、という3本柱で考えています。
コミュニティ・ツーリズム
しかしいちどクラウドファンディングを実施するだけでは、自立を前提とした継続的なサポートをおこなっていくことはできません。そこで今後は当社のホームステイプログラムの料金に、このグループへの支援金を上乗せしていこうと考えています。
かっこいい言い方をすれば、「コミュニティ・ツーリズム」を実現するための「コミュニティ・フィー」です。
小さな負担で大きな効果
ここに来てこの制度を導入すべきと考えた最大の理由は、わたしたち日本人にとっては負担の少ない金額でも、ムシャの人たちにとっては生活を劇的に改善する効果がある、と気づいたから。
前回の記事でお伝えした通り、一部のAVEGAメンバーはFARG(ファルジェ)という支援金を毎月11,000ルワンダ・フラン(約1200円)受け取っており、これを元手にひと家族が暮らしています。つまり1000円程度あれば、ひと家族がひと月なんとか食べていけるのです。
この支援金と同程度の金額を、コミュニティ・フィーとしてお客様一人一人の料金に上乗せし、それをグループに還元していければと思っています。
地域へのお返し
もうひとつの理由は、後ろめたさがあったから。ホームステイプログラムを実施する際は、ホストファミリーとなっているフェーザさん家族には謝礼を渡しており、それがこの家族の重要な収入源になっています。経済的な利益だけでなく、ルワンダでは「お客さんは神様からの恵み」と考えられているので、お客様を受入れて交流できることを純粋に喜んでくれていました。
しかしそれ以外の家庭には、これまでなにもできていませんでした。とはいえ、フェーザさんの家にしょっちゅう日本人が泊まりに来ていることは周知の事実。正直なところ、「あの家だけお客さんが来てずるい!」とか、「よくわからんよそ者を連れてきやがって……」とか思われていないかと少し心配もしていました。だから何かしらの形で、コミュニティとも繋がれたらいいなと思っていたのです。
そこでホームステイの収益を、このグループにも還元させてもらおうと。この村に学びや体験を得に来ているわたしたちを受入れてもらっているだけでもありがたいこと。実際これまでホームステイプログラムを運営できてきたのは、地域の方々があたたかく見守ってくださったおかげです。今後はぜひホストファミリー以外の家族とも交流を深めていきたいですが、直接的な関わりがなかったとしても、「お返し」をする正当性は十分にあるかなと。
そしてなにより、この20家族86人の生活を知ったいま、もう見て見ぬふりはできません。この状況を知りながら「勉強になりました!」と言って満足して帰るだけのプログラムにはしたくないのです。
収益の一部を還元して、お母さんたちの生活向上に役立てることは、「ひとりでも多くのお客様をお連れしよう」というわたしのモチベーションにも繋がります。それによって事業を拡大でき、お客様にも農村体験に満足いただけるのであれば、Win-Win-Winで三方よしです。
そんな未来をめざして、まずはクラウドファンディングから始めていきます!応援よろしくお願いいたします!